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離婚の基礎知識:三つの離婚方法と法的ステップ

一度は愛し合い夫婦となった仲であっても、もとをたどれば他人同士。結婚生活の間に、どちらか一方の努力ではどうにもできない問題が持ち上がり、「離婚」の2文字が頭に浮かぶことも少なくないでしょう。

「不倫をされた」
「ワンオペに疲れた」
「性格の不一致ってヤツだと思う」

このような声を耳にすることは、決して珍しくありません。とはいえ離婚は法律問題。単純に別れればOKだった恋人時代とは違い、離婚には「できる・できない」に加えて「有利な離婚」「不利な離婚」があるのです。
特に子どもがいる場合、「とにかく離婚すること」ではなく「これからの人生を良くするためにベストを尽くして有利なかたちでの離婚」に決着させることが大事です。このことを念頭に弁護士の磯野清華先生の監修のもと、本シリーズを続けていきます。

シリーズ第1回となる今回は、離婚を考えたときの基本中のキホン、「離婚できる? できない?」ということについてお話ししましょう。

話し合いで済めば、いつでも離婚できる

民法第763条で「夫婦は、その協議で、離婚をすることができる」と定められています。つまり、夫婦間の話し合いによって離婚を決める「協議離婚」であれば、理由の如何を問わずいつでも離婚することができる、ということ。

実際、日本の離婚の約9割の夫婦が協議離婚しています。しかし、どちらか一方が離婚を拒否したり、慰謝料や養育費、財産分与などの諸条件が夫婦間の話し合いではまとまらない、ということも起こりえます。

「夫婦での協議で離婚できない」という事態に陥ってしまったら、調停委員が間に立って話し合う「調停離婚」という手続きに進むことができます。

そして、調停を行っても夫婦、双方の意見が折り合わなかった場合には、最終段階の「裁判離婚」へと進みます。「モメそうなら訴えてやる!」と意気込む人も多いのですが、いきなり裁判には持ち込むことはできないのです。調停から裁判へと段階を踏むことを「調停前置主義」といいます。

「協議離婚」では何を話し合うべき?

離婚を前提として夫婦での話し合い、すなわち協議をする場合は精神的に落ち着いて相手と向き合えるタイミングを選ぶことが大切です。「とにかく離婚できればいい! そのためなら多少、不利でも構わない!」と焦ってしまったり、相手の主張や勢いに飲まれて、話し合いが不十分なまま言われるがままに離婚届けに署名・捺印してしまわないことが、大切です。

そこで気になるのが「協議するときに、どんなポイントを押さえておくべきなのか?」ということです。この記事の中盤に押さえておくべきポイントをまとめたチェックリストを掲載したので、ご活用ください。

冷静に話し合いに臨むためにも、事前に紙に書きだして整理しておきましょう。また、協議するときには後々の「言った」「言わない」を防ぐためにも、話し合いの様子をボイスレコーダーやスマートフォンの録音機能等を使って残しておくと安心です。

協議離婚をめざすのなら、まず夫婦で話し合うべきテーマは「離婚に応じてもらえるかどうか」という点になります。配偶者から「離婚には応じられない」といわれ、話し合いが平行線をたどるようならば迷わず「調停離婚」に進める準備を始めましょう。詳しくは次項の「調停離婚って何?どう進めるの?」をご覧くださいね。

夫婦間の話し合いで、お互いに離婚に応じる意思を確認できた場合は、次に話し合うべき重要なポイントは財産分与やお子さんの親権、養育費、面会交流の頻度や方法などです。離婚したいと思うに至った原因が「配偶者に不貞(不倫)行為があった」というようなケースでは、法律用語では不貞行為を行った側のことを「有責配偶者」と呼びます。相手が有責配偶者なのであれば、前述した財産分与や養育費などに加え、慰謝料も請求することができます。

協議離婚の場合、離婚届に署名・捺印して区役所や市役所に提出すれば離婚することができます。しかし、これだけではせっかく話し合った財産分与や養育費、慰謝料などの取り決め内容を客観的に証明することができなくなってしまいます。つまり「払われなかった」場合に何ら証拠がない、という状況になってしまうのです。

そこで、離婚協議書や公正証書などで書面に残しておくことが重要になります。「養育費を払ってもらえない」といった不履行が起きた場合にも、書面にしておくことで給与差押さえなどの強制執行が可能となります。離婚届の提出は、これらの段取りを踏んでからにしましょう。公正証書は公証役場で作成します。行政書士や弁護士などに作成の補助を依頼することもできます。公正証書の作成には安くて数万円程度の費用が掛かりますが、通常の離婚協議書に比べて早く強制執行ができるというメリットがあります。相手が本当に支払ってくれるか不安な方は、公正証書を作成した方が安心できるでしょう。

協議離婚において注意すべきことは、話合いの中で例えば「養育費はいらないので親権が欲しい」といった交換条件を相手から提案されたときです。実は、この条件はお互いに合意したとしても、あとでひっくり返すことができる場合があるからです。

このような条件を相手が提示してきた場合は「それってお互い、合意したとしてもあとでひっくり返されるかもしれない」と保留にするなどして、法律相談や関連書籍などで確認しましょう。ちなみに、弁護士による法律相談は30分5,000円ほどで受けることができます。初回相談は無料という法律事務所もありますので、ご自分に不利な離婚をしないためにも、まずは専門家に相談されることをおすすめします。

離婚を前提として協議する際の項目チェックリスト

✅ 離婚に同意してもらえるかどうか

✅ 共有財産のリストアップと分割方法

・私が把握している自分名義の財産(預貯金、保険、株、年金、不動産等)
・私が把握している相手名義の財産

慰謝料の有無と額
 希望の額は     
  支払方法は一括 or 分割
  いつまで支払ってもらうか     まで

子どもの親権はどちらが持つか
  希望は     

養育費の額
  希望の額は円

面会交流の頻度とその方法
  希望する頻度は     
  面会方法は     

協議内容を文書にまとめる確認(離婚協議書か、公正証書か)

離婚届をどちらが提出するか

協議離婚不成立!その時は「調停離婚」へ

協議離婚では話がまとまらなかった場合には、調停離婚という方法で離婚することができます。調停離婚は裁判所に申立てを行い、調停委員を間に立てて離婚の話をすることで合意をめざす方法です。

弁護士を立てずに調停離婚に持ち込むことは可能です。しかし、相手が離婚に応じるつもりがない場合、調停になることでますます意固地になってしまう可能性も考えられます。また、不貞をはじめとする有責事項が自分にある場合や、相手方がすでに弁護士に依頼しているときは、調停の場で不利になることも。このような場合は、自分も弁護士を立てたほうが安心です。

調停委員が間に立ってくれるとはいえ、争いごとの仲裁や、傷ついた心のケアをしてくれるわけではありません。感情的に反論したり、論点があいまいな主張は調停委員の心証を悪くする可能性があることも覚えておきましょう。

自分がどうしたいか、何を理由として離婚したいのかを考えて、冷静かつ論理的に主張できるように準備しておくことが大事です。必要であれば、文書で補足することもできるので「口で説明するより、文章でまとめる方が得意」という方は補足する文書の作成に力を入れるとよいでしょう。

離婚調停となっても、離婚することや財産分与などの諸条件において双方の合意が得られなかった場合、離婚は不成立となります。また、調停は「出頭しない」という選択も可能なので、相手の欠席により不成立という展開も想定されます。

<離婚調停の申し立て 5つのステップ>

  1. 申立書など必要な用紙を家庭裁判所でもらうか、サイトからダウンロードする
    http://www.courts.go.jp/saiban/syosiki_kazityoutei/syosiki_01_23/index.html
  2. 必要事項を記入する
  3. 添付書類を用意する
  4. 手続きをする家庭裁判所を調べる(同居の場合は住所地の管轄、別居の場合は相手の住所地の管轄)
  5. 申立手続きを行う

法廷で決着をつける!「裁判離婚」

調停で合意に至らない、また相手や代理人が調停に出頭しない場合には、離婚裁判を起こし、法廷で決着をつける必要が出てきます。

このとき、必要となるのが民法第770条で定められている「離婚原因」です。

協議離婚や調停離婚では、離婚の理由は問われません。しかし、裁判離婚では認められる離婚理由があらかじめ決められているのです。つまり、どんなに離婚したくても「離婚は認められない」という判決内容であれば、その判決に従って婚姻関係を継続しなくてはならないのです。

<民法第770条で定められている離婚事由>

  1. 配偶者に不貞な行為があったとき
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき
  3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みが立たないとき
  5. その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき

1~5の詳細は第3回目の記事で解説します。

上記に当てはまらない場合、たとえば「性格の不一致」「一緒にいるメリットが感じられない」といった、「よくあるけれど“ふわっ”とした理由」は、裁判離婚では認められません。

加えて、離婚裁判になると法律の知識が必須となります。弁護士を立てずに自分で対応することは不可能ではありませんが、相手が弁護士を立てれば一瞬で形勢不利になります。また、ちょっとした手続きにも法律の知識が必要になってきます。

もちろん、途中から弁護士に依頼することができますが、じつは離婚に限らず、法律がからむ問題の解決は「初動が肝心」。弁護士に依頼するかしないかの判断のためにも「費用の相談も含めて、とりあえず法律相談をする」ことが最善策といえるでしょう。

<離婚裁判5つのステップ>

  1. 訴状2通と必要書類を管轄の家庭裁判所に送る
  2. 受理された場合、原告と被告にそれぞれ呼出状が送られる
  3. 口頭弁論を行う
  4. 結審
  5. 判決

裁判離婚は1〜1年半ほどの時間がかかります。離婚請求を認める判決が出ると、裁判離婚が成立し、10日以内に必要書類をそろえて離婚届を提出します。この手続きは、裁判を起こした側、つまり原告が負担します。

次回の記事では「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」それぞれのメリットデメリットを解説します。


監修:弁護士 磯野清華 (いその せいか)

企画・編集:CiaoLab編集部
記事:CiaoLab編集部
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