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離婚の基礎知識:離婚後の名字と戸籍、経済的自立

離婚後の名字と戸籍

9割以上の夫婦が結婚後、夫の名字(氏)に

「結婚するときよりも離婚のほうが大変」というように、離婚には決めるべきこと、考えなくてはいけないことがたくさんあります。今回は、「離婚後は名字(氏)を旧姓に戻すか、それとも今の名字を名乗り続けるか?」というお悩みに役立つ情報をお届けします。

平成27(2015)年の統計によると、初婚の夫婦で夫が妻の名字(氏)を選んだのはわずか4%。昭和50(1975)年の1.2%と比べると増加はしているものの、微増にすぎません。つまり、9割以上の夫婦が夫の名字(氏)を選択しており、離婚に際して「名字(氏)をどうしよう?」と悩むのは女性特有のもの、と言えます。

参考)厚生労働省 平成28年度 人口統計特殊報告「婚姻に関する統計」の概要

結婚、離婚で名字を変更した場合に影響を及ぼすことがら

<身分証明証>

  • 運転免許証
  • 健康保険証
  • パスポート

<主な契約名義>

  • 銀行口座など金融機関
  • クレジットカード
  • 生命保険
  • 賃貸契約など

<各種社会保険>

  • 年金
  • 健康保険
  • 雇用保険

などの各種契約の名義など様々な手続きが発生します。結婚したときにあまりの煩雑さに驚いた人も多いことでしょう。しかも、離婚の場合は、結婚時と異なり子供がいるケースも多く、子供の名字(氏)の変更の手続きも発生します。

名字の変更にともなう諸手続きを含めて、ほとんどの場合が女性の負担となること。さらに、母親が親権を持つことも多いことから、お子さんがいらっしゃる場合、「旧姓に戻すべきか、否か」で悩む方も少なくありません。

じつは名字(氏)の選択は「戸籍をどうするか?」という問題ともからんできます。旧姓に戻す場合、結婚していたときの名字を名乗り続ける場合の違いについて、みていきましょう。

結婚によって「夫婦の新しい戸籍が作られる」

法律用語では名字のことを氏といい、氏は戸籍と関連しています。

結婚するときに婚姻届を提出しますが、それによって夫も妻も今までの戸籍から除籍され、夫婦で新しい戸籍がつくられます。その際に、夫と妻、どちらの氏を使用するかを決めることになります。

とはいえ、日本では慣習的に「夫の名字を名乗るもの」とされていることもあって、特段の事情がない限りは夫の名字を選ぶ人が圧倒的に多いのが実情です。また、このとき選択した氏、名字をもともと名乗っていた人を戸籍の「筆頭者」にすることが一般的です。

子供は出生届の提出とともに夫婦の戸籍に入ります。これが、結婚しているときの夫婦と子供の戸籍の状況です。

氏の選択に関係する「戸籍の原則」とは?

離婚は、結婚時に新しく作った夫婦の戸籍からどちらか一方を除籍する、ということです。今回は妻が夫の戸籍を離れるという一般的なケースでお話をします。夫の戸籍を離れるにあたっては、どの戸籍に移るのかということを考える必要があります。この時の選択肢は2つあります。

(1)結婚前の戸籍に戻る「復籍」

戸籍の原則→戸籍には二世代しか入ることができない。
→元の親の戸籍に、子供と一緒に入ることはできない。

(2)「新しい戸籍を作る」という方法

戸籍の原則→戸籍の筆頭者と同じ氏の人しか同じ戸籍に入ることができない。
→妻が旧姓に戻る場合には子供の名字(氏)を変えなければならない。

母親は復籍し、子供は前の夫の戸籍に入れたまま、ということも可能ですがこの場合、母と子供の名字(氏)が違うものになります。

さらに「元の戸籍が除籍になっている」という場合も、復籍はできません。除籍というのは、死亡や婚姻によって、元の戸籍にいた人が全員、その戸籍からいなくなっている場合です。例えば、両親ときょうだいがいたとしても、両親が死亡し、きょうだいがそれぞれ結婚して別の戸籍に移った場合は、戸籍は除籍になっています。

POINT1

  • 復籍する場合には、旧姓に戻す必要がある
  • 自分の子供と一緒には復籍はできない
  • 母親のみ復籍し、子は前夫の戸籍にという場合、母子で異なる名字になる
  • もとの戸籍が除籍になっている場合、復籍はできない

離婚後、自分を筆頭者に新しい戸籍を作る

「元の戸籍が除籍になっている」、「結婚していた時の名字を名乗り続けたい」、「自分と子供を同じ戸籍にしたい」という場合は、自分を筆頭者とした新しい戸籍をつくることになります。旧姓に戻して新しい戸籍を作ることも可能ですが、この場合はお子さんの名字(氏)も筆頭者となる人と同じ名字に変更する必要があります。

子供の名字を変えないために「結婚していたときの名字をそのまま名乗り続けたい」という方も少なくありません。そのための「婚氏続称制度」については、次の項で解説します。

新しい戸籍を作るときに気を付けていただきたいのが、母親が親権を持ち、両親が離婚した場合でも離婚届の提出によって自動的に子供の戸籍も移動するわけではない、という点です。子供の戸籍は「戸籍の移動」という手続きが別途、必要になります。

婚氏続称の届を出して、結婚していた時の名字(氏)を使い続ける方法

新しい戸籍を作る前に、旧姓に戻すのか、それとも結婚していた時の名字(氏)を名乗り続けるのか? を決める必要があります。結婚していた時の名字を名乗り続けるのであれば離婚後3か月以内に役所に届け出る必要があります。とはいえ、離婚届の提出時に一緒に届け出るのがベストです。なぜなら、離婚届の提出から婚氏続称の届を提出するまでの間、旧姓に戻ることになり、短期間のうちに名字の変更の手続きを2度、行わなくてはならないからです。

婚氏続称の最大のメリットは、離婚によって名字(氏)の変更が発生しないため、運転免許証やパスポートなどの身分証明書などの変更手続きをしなくても済む、という点です。また、子供の名字も変わらないので学校でお子さんが不便を強いられるようなこともない、という点もメリットといえるでしょう。

離婚に至った理由によっては、心情的に「元夫の名字を名乗りたくない」という気持ちが芽生える方も少なくないかもしれません。しかし、自分と子供の名字の変更のための手続きや、職場での不都合などを含めて、冷静に考えることが大切です。

また、婚氏続称を選択するにあたって、元夫の許可を得る必要はありません。反対されたとしても、続称することはできます。

POINT2

  • 旧姓に戻しても自分を筆頭者とした新しい戸籍を作ることができる
  • 新しい戸籍に子供を入れるためには「子の戸籍移動」の手続きが別途必要
  • 結婚していたときの名字(氏)を名乗り続けるには、離婚届の提出時に「婚氏続称」の届け出をするのがベスト

婚氏続称を選んだものの「旧姓に戻したい」と思った場合

戸籍法107条による「氏の変更許可審判の申し立て」を家庭裁判所に行い、やむを得ない事由があると認められた場合に限って旧姓に戻すことができます。

とはいえ、簡単な話ではないので「後で旧姓に戻せばいいか」というような軽い気持ちで、婚氏続称を選択しないよう、気を付けてください。

なぜなら、「やむを得ない事由」というものが、裁判所の判断に委ねられるからです。つまり「離婚後に知り合って交際し始めた男性に『君が元夫の名字を名乗っているのが嫌だ。旧姓に戻して欲しい』といわれた」というような理由では、裁判所に「やむを得ない事由」だとは認められないのです。

個人的には「恋人に旧姓に戻して欲しい」と言われるのは「やむを得ない」と感じるかもしれませんが、裁判所の判断は「氏の変更をしないと社会生活において著しい支障を来す場合」に限られます。

例えば、「元夫の名字が大変、珍しいものであり婚氏を続称することにした。しかし、離婚してから数年経って、同じ名字の夫の親族が刑事事件を起こして逮捕された。報道によって広く知られることになり同姓であることで不利益を被っている」というような場合であれば、「やむを得ない事由」と認められる可能性があります。

婚氏続称をすると2度目の離婚で「旧姓に戻す」ことができなくなる?

婚氏続称を選択する際の注意事項が、もうひとつあります。

離婚後、婚氏続称していた方が再婚。しかし、再婚相手とも離婚することになった場合、簡単には旧姓に戻すことができなくなるという点です。

例えば、山田姓から結婚によって佐藤姓になり、離婚後も佐藤姓を名乗っていた方がいたとします。そして、鈴木さんと再婚して鈴木姓になったと仮定します。この再婚相手である鈴木さんと離婚をした場合、鈴木姓を名乗り続けるのか、もしくは佐藤姓に戻すのか、の二択になります。山田姓に戻すことはできません。

最初の離婚のときに、佐藤姓から旧姓である山田姓に戻して、山田姓で鈴木さんと再婚していれば、鈴木姓から山田姓に戻すことは可能です。

どうしても旧姓に戻したい、という場合は前述した戸籍法107条による「氏の変更許可審判の申し立て」を家庭裁判所に行い、認められた場合に限って旧姓に戻すことはできます。ただし「やむを得ない事由」でない限り難しいのは前述したケースと同じです。

氏の変更が認められるか否か、という判断は個々のケースによって変わってきます。なので、一度、可能か不可能かということも含めて法律相談を受けるとよいですね。

無料の法律相談もありますし、有料の場合でも30分5000円が相談料の目安となります。

経済的自立

名字(氏)の選択は経済的な自立にも影響する

名字(氏)の変更は、仕事の面にも関わってきます。会社員であれば、名字(氏)の変更により、健康保険や雇用保険、厚生年金などを含めた諸手続きを会社にしてもらわなくてはなりません。個人事業や会社を経営している方も、さまざまな手続きが発生します。とくに、会社を経営している場合は、離婚によって名字(氏)が変わると会社登記の変更の必要も発生し、決して安くはない費用がかかります。

離婚を視野に入れて、就職活動をする、資格を取得するといったことを婚姻期間中に行う方もいることでしょう。国家資格、民間資格ともに資格の証書にも氏名は影響しますので慎重に考えていきましょう。

仕事探し

離婚した後から仕事を探すのではなく、離婚する前に安定収入を確保する準備を行いましょう。とくにお子さんがいる場合は、離婚後ひとり親という状況になってしまってからでは就職のハードルが上がり、思うように仕事が探せないことが少なくありません。
したがって遅くとも離婚に踏み切る半年以上前から準備を進めましょう。

<正社員>

長期にわたり、安定収入が得られます。福利厚生は会社によってまちまちですが、子供のいる主婦でも働きやすい会社が増えていますので、幅広く探してみましょう。

<派遣社員>

時間・勤務地の自由度が高く、自分に合った働き方を探しやすいことがメリット。アルバイト、パートよりも待遇が良く、賢い選択といえます。しかし、資格やキャリアが仕事選びに大きく影響します。派遣会社に登録する際、履歴書に登録できる資格の取得など、可能な範囲で努力しておくことが大切になってきます。

ほかにも、起業する方法もありますが、リスクも大きく、入念な準備が必要です。半面、うまくいけば家族との時間も事由に取りやすいことが最大のメリットになるかと思います。自分のスキルを見つめて、しっかりと考えてゆきましょう。 仕事探しの手段としては、ハローワークが便利です。

<マザーズハローワーク>

子育てをしている女性の仕事探しの強い味方。
参考:厚生労働省マザーズハローワーク・マザーズコーナー

  • キッズコーナーなど、子ども連れで利用しやすい環境
  • 担当者制による職業相談
  • 地方公共団体等と連携した保育所等の情報提供
  • 仕事と子育ての両立がしやすい求人情報の提供

総合的、かつ一貫した就職支援と、きめ細かい相談に対応してくれます。利用料等が無料なのも嬉しい限りです。ほかにも以下の支援を受けられます。

女性再就職支援就業相談自分の適性や現状を見つめ直すキャリアカウンセリング
保育付き職業訓練ワード、エクセルなどの無料パソコン講習会など
各種再就職応援セミナービジネスマナー、履歴書、職務経歴書などの応募書類対策など
保育園情報や子育てと仕事の両立のためのアドバイス保育園、幼稚園、認可外保育園などの情報提供

住まい探し

離婚後の住まいをどうするか? は自立のための就職・就労のためにも早めに決め手おきたいポイントです。選択肢としては以下の3つになる人がほとんどでしょう。

  1. 実家
  2. 賃貸物件を探す
  3. 婚姻中の家(持ち家または賃貸)に住む

2の「賃貸物件を探す」の場合、民間の住宅を探す前にチェックしておきたいのが「公営住宅」です。

公営住宅は地方自治体等が低所得者向けに賃貸する住宅です。自治体や空室状況にもよりますが、ひとり親の家庭は優先的に入居できる制度があることも。収入に応じて家賃が算定される点もメリットです。
※第3章 自立の準備で「離婚によって得られるお金と請求の仕方」をご案内します。


監修:弁護士 磯野清華 (いその せいか)

企画・編集:CiaoLab編集部
記事:CiaoLab編集部
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私たちを取り巻く「恋愛事情」や「夫婦の関係」は時代とともに、大きく様変わりしてきました。
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