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離婚の知恵袋

離婚の原因と事例:浮気・不倫の定義と慰謝料の金額について

そもそも法律用語の“不貞行為”とは?

相手が既婚者であることを知っていて、肉体関係になること

一般的に不倫と言われている行為のことを法律用語では“不貞行為”と呼んでいますが、まずはその定義を確認しておきましょう。

“不貞行為”とは、「故意または過失により、他人の平穏・円満な結婚生活を送る権利を侵害すること」であり、民法上の不法行為(違法に他人の権利を侵害する行為)に該当します。具体的には、以下の要件を満たす必要があります。

  • 故意または過失があること(既婚者だと知っていた、または常識的に考えてわかるはず)
  • 不貞行為時に夫婦関係が破綻していたとはいえないこと
  • 肉体関係があること

つまり「不倫発覚前からお互い納得して離婚前提に別居していた」「ふたりで楽しそうに食事していただけ」「楽しくメッセージのやり取りをしていただけ」などの場合には、法律上の不貞行為としては認められない可能性が高いということです。

肉体関係がないのに慰謝料が認められたケースもある

ところが、肉体関係がなくても、“社会通念上相当なレベルを超えるほどの親密な関係”にあったことを証明できれば、不法行為と認定されるケースも稀にあるようです。これはつまり、「世間一般の常識で考えて、既婚者とそこまで親密に交際するのはおかしい」と言えるような関係のことです。

たとえば、仕事帰りに男女ふたりで食事をするのは、人によっては職業柄仕方がないこともあるでしょう。しかし、家族の記念日や行事もそっちのけで毎週のように恋人同然の手つなぎデートを繰り返していたら……ほとんどの人が「おかしい」と思うはずです。

2014年3月に大阪地裁で判決が下された有名な“プラトニック不倫”の事例では、不倫相手の女性が肉体関係を断り続けていたにも関わらず、44万円の慰謝料支払いが命じられました。この事件では、性交渉はなかったものの、妻を顧みず恋人同然の親密なデートを続け、キスや抱擁などのスキンシップを繰り返していました。
このようなケースもあるので、肉体関係の証拠がないからといって、すぐに諦める必要はありません。夫の不倫に苦しんでいる方は、証拠集めの方法などについて弁護士に相談してみましょう。

配偶者が不倫していたケース

不倫している夫から「離婚してくれ」と切り出され、納得がいかない

裁判上、有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められないとされています。この場合、不倫の有力な証拠があるかどうかがカギとなるでしょう。

不倫の証拠がない場合も、一方的な離婚請求に応じる必要はありません。その場合、協議離婚(話し合い)→家庭裁判所での離婚調停→離婚裁判と進んでいくことになります。
離婚裁判を起こすためには、民法第770条に定められている“5つの法定離婚事由”が必要とされています。

  1. 配偶者の不貞行為
  2. 配偶者の悪意の遺棄
  3. 配偶者の3年以上の生死不明
  4. 強度の精神病(統合失調症、躁うつ病などに限定)
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由(DV・モラハラ・過度な宗教活動・浪費など)

不倫夫は、不倫の証拠を握られていないのをいいことに、あなた側に上記の法定離婚事由があると主張してくるかもしれません。
不倫している人は、恋愛で気分が異常に高揚していたり、やましさなどから、被害者側を平気で悪者に仕立てあげてくることがあります。強い口調で「お前の性格には耐えられない」「悪いのはお前だ」「離婚してくれ」と言ってくるかもしれませんが、簡単に同意しないことが大切です。

有責配偶者からの離婚請求は原則認められませんので、一刻も早く不倫の証拠を抑えて、こちらに有利になるようにしよう。
なお、例外的に有責配偶者からの離婚請求が認められるケースもありますので、ぜひ確認しておきましょう。有名な判例(最高裁昭和62年9月2日判決)によると、有責配偶者からの離婚請求が認められるには以下の条件を満たす必要があるとされています。

  • 別居期間が長いこと
  • 未成熟子がいないこと
  • 離婚しても、被害者側の配偶者が経済的・社会的に過酷な状況に置かれないこと

どうやら夫はW不倫しているらしいけど、独身相手の場合との違いは?

既婚者同士の“W不倫”も少なくありません。夫が既婚女性とW不倫をしている場合、独身女性が相手であるケースと比べて、何か違いはあるのでしょうか?

仮に、夫の不倫相手の女性をAさん、その夫をBさんとしましょう。W不倫の場合ですと、被害者は“あなた”と“Bさん”の計2人になります。不倫が発覚した場合、あなたは“Aさん”と“夫”に対して、Bさんは“Aさん”と“あなたの夫”に対して、それぞれ慰謝料請求権を有することになります。

ここからがややこしいのですが、W不倫では2組の夫婦が離婚するか再構築を選択するのかによっても状況が変わってきます。再構築を選択した夫婦は、財布が同じ配偶者に慰謝料請求をしても仕方がないので、不倫相手だけに慰謝料請求をすることになります。そして慰謝料の金額は、被害者が離婚に至ったケースの方が高くなる傾向にあります。

二組とも再構築を選択した場合、慰謝料は相殺になることも考えられます。もしABさん夫婦だけが離婚して、あなたは夫との再構築を選択した場合、Bさんはあなたの夫とAさんに対して慰謝料請求権を行使するでしょう。
あなたもAさんに対して慰謝料請求できますが、離婚してしまったBさんの方が慰謝料金額は高くなる可能性があるので、結果的にあなたが損をしたような状態になるかもしれません。

夫の不倫相手はSNS・アプリで出会った“若い子”だった!

不貞行為で相手の責任を追及するためには、故意・過失が要件と書きました。
不倫相手が仕事関係で出会った女性や、同級生だった場合には、既婚者であることを知っていた可能性が高いと言えます。しかし今は、SNS・出会いアプリなど通じて、まったく接点がなかった人とも簡単に出会える時代です。単身赴任中の夫が、「自分はずっと独身で、結婚も真剣に考えている」「今はバツイチだ」などと巧みに嘘をついて、恋愛経験の少ない若い独身女性を巧みにだましているケースもあります。相手の女性が騙されても仕方のないような状態だった場合には、女性には故意も過失もないとされ、慰謝料を支払う義務を負いません。

また,不倫の責任の大きさは、不倫当事者の年齢差によっても決まります。不倫相手の女性があなたの夫より一回りも二回りも年下である場合には、あなたの夫の責任の方が重いと判断される傾向にあります。世間一般的には、「年齢が低い方が人生経験も恋愛経験も未熟であり、立場が弱い」と判断されるからです。そうすると、相手の女性から取れる金額が少なくなることもあります。

あなたの夫が、相手の女性の未熟さに漬け込んで強引に不倫に持ち込んだ場合、相手の女性の責任はあまり追及できない可能性もあるということを押さえておきましょう。

自分が不倫していたケース

不倫しちゃったけど、子どもは可愛いので夫に渡したくない!

母親が不倫していたとしても、それまで育児をしっかりとやっていた実績がある場合には、あまり親権に影響を及ぼさないとされています。
不倫はあくまでも夫婦間の問題であり、子育てとは関係がないと考えられているからです。

夫側は「不倫するような人は母親に相応しくない」と主張してくるかもしれませんが、これまでの育児実績を示す証拠などを揃えて、自分の方が親権者として相応しいことを反論できるようにしておきましょう。

しかし、いかなる場合にも不倫が親権者決定とまったく無関係という訳ではありません。不倫相手に密会するために幼い子どもを夜間の自宅に独りぼっちにさせていたとか、子どもの心身の発達に悪影響を及ぼしかねない事情があったのであれば、親権者として不利になるおそれもあります。

そもそも私が不倫したのは、夫のモラハラ・DVが原因なのに

夫のモラハラ・DVから逃げるために不倫に走った、夫の不倫に対する報復として“不倫返し”をしたなどのケースは、どうでしょうか。

この場合、夫側の落ち度(モラハラ・DV・不倫など)の確たる証拠を握っているのであれば、離婚の際に両成敗になる可能性もあります。しかしあなたが夫側の法定離婚事由について何も証拠を集めていないのに、ただただ逃げたい・仕返ししたいという理由から不倫をしてしまった場合には注意が必要です。

夫だけがあなたの不倫の証拠を掴んでいた場合、あなただけが慰謝料を請求されることになるかもしれません。

セックスレスなんだから、不倫したっていいじゃない

「子どもが欲しい」と言っているのに、夫から拒否されている。話し合いにすら応じてくれないので、心にぽっかり空いた穴を埋めるように不倫に走った……。
セックスレスや妊活は、とてもデリケートな問題です。夫婦で価値観が合わないと、非常に辛い思いをすることになりかねません。

もちろん不倫はやってはいけない行為ですが、今回のケースでは、理由もなくセックスレスを続けたうえに話し合いにも応じなかった夫側にも、落ち度があると言えます。セックスレスも慰謝料の発生理由になるので、夫から拒否されていたことがわかる証拠を集めておくのも対策のひとつ。
とはいえ,セックスレスだからといって不倫が許されるわけではありません。離婚をする際に夫から不倫の慰謝料を請求された場合、セックスレスだったと主張しても慰謝料を支払わなければならなくなる可能性はとても高いです。

出来心から不倫してしまったけど、夫とは離婚したくない

結論から述べますと、この場合は夫次第となるでしょう。

協議離婚で一方が離婚を拒否した場合、次に離婚調停、離婚裁判と進んでいきます。日本では調停前置主義がとられているので、いきなり離婚を起こすことはできません。あなたが拒否し続けても夫の離婚意思が固い場合には、不倫の証拠をもとに離婚裁判を提起されることになるかもしれません。

民法第770条に定められている法定離婚事由のひとつが、不貞行為です。夫が不倫の証拠をきちんと押さえているのであれば、離婚に応じるしかない可能性があることを覚悟しておきましょう。

そのうえで、どうしても離婚したくないのであれば、誠心誠意謝罪してみることです。「もう2度としません」などと記載した誓約書を書いてみるのもいいかもしれません。

不倫の証拠は、何をどうやって集めるべき?

では不倫の証拠は、何をどうやって集めればいいのでしょうか?

冒頭でもご説明した通り、法律用語でいう“不貞行為”の定義は、ひと言でいうと“肉体関係があったこと”。肉体関係の証拠がなくても、“社会通念上相当なレベルを超えるほどの親密な関係”にあったことを証明できれば、慰謝料が認められるケースも稀にあるようです。
以下に具体例をいくつか挙げておきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

  • ラブホテルにふたりで出入りする瞬間をとらえた画像・動画
  • 肉体関係にあることがわかるメッセージのやり取り
  • 性行為中に撮影された画像・動画
  • 不倫当事者が不倫の事実を認めた音声を収めた録音データ
  • 不倫当事者が不倫の事実を認め、署名捺印した誓約書等
  • ラブホテルや飲食店の領収書
  • クレジットカードの使用履歴
  • 不倫当事者によるSNSの投稿(不倫の証明に繋がる投稿)

不倫の慰謝料とは?どうやって金額が決まるの?

慰謝料とは“精神的苦痛に対する損害賠償金” 3年の消滅時効あり

不倫をされた被害者側は、加害者ふたりに対して慰謝料を請求する権利を有しています。
慰謝料とは、“精神的な苦痛について支払われる損害賠償金”のこと。
慰謝料は、いつまでも請求できる訳ではありません。

「不倫をされたことを知ったとき、および不倫の加害者を知ったとき(注:不倫相手の氏名・住所がわかり慰謝料請求できる状態にある、という意味)から3年の消滅時効」

があることに注意が必要です。
つまり、不倫されたのが事実であっても、上記の起算点から3年間も権利を放っておいた場合には、その後一切請求することができなくなるという意味です。

慰謝料の金額は、どんな時に増えるor減るの?

慰謝料の金額は、様々な要素から総合的に決められます。具体的な増減の要素を挙げておきますので、参考にしてみてください。

慰謝料を増額させる要素

  • 結婚生活が長い、熟年夫婦
  • 不倫期間が長い
  • 未成熟子が複数いる
  • 不倫相手との間に隠し子がいる
  • 不倫の態様が悪質である

慰謝料を減額させる要素

  • 結婚生活が短い、新婚夫婦
  • 不倫期間が極めて短く、回数も少ない
  • 未成熟子がいない
  • 不倫相手がかなり若く、社会的に未熟だった

まとめ

不倫についての基礎知識を解説しましたが、実際にはこの記事で紹介したよりもはるかに複雑な状況の中で思い悩んでおられる方が少なくありません。
ケース・バイ・ケースなところも多いので、困ったことがあれば信頼できる弁護士に早めに相談されることをお勧めします。

企画・編集:CiaoLab編集部
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