目次
家族構成
不倫夫 30代後半 会社員
妻 30代半ば 専業主婦
幼稚園と小学校低学年の子供2人
探偵さん、本日もよろしくお願いいたします。不倫と浮気、一般的な会話では同じようなニュアンスで使う言葉ですが、探偵業界もしくは法律的な定義の違いがあるのですか?
「こちらこそよろしくお願いします。不倫と浮気ですが、言葉の定義というよりも、法律的に『不貞行為』とみなされるための条件があります。まず、肉体関係があること。つまり、デートを重ねているだけ、キスやボディタッチだけ、というような関係は法律では不倫にならないのです」
どこからが浮気、不倫かという議論で「ほかの異性と二人きりでご飯を食べる」というところに「それは浮気!」と考える男女もいるようですが。「酔った勢いでキスしちゃった」とか「ハグしちゃった」というのは、法律上の不倫や浮気にはならないのですね。肉体関係、というと一時期ちょっと流行った「一線を越えた」ってやつですね。
「その『一線を越えた』というのは、法律的には『性器の挿入があった』という解釈になります。つまり、挿入がなかったら不貞にはならない、ということです」
うっ。いきなり具体的すぎる表現でちょっと面くらいました。でも、それって密室の中のことですから、「ありました!」って証明する方法はないですよね?
「そうです。だからちょっと法律に詳しい人だと不倫がバレたときに、ラブホテルに行った証拠写真があるのに、『入れていない』『最後までしてない』って言い張る人もいますよ」
どう考えても無理がある主張にしか聞こえません……。
「悪あがきにしか聞こえませんよね。とはいえ、確かにそのものズバリの証拠は探偵は押さえられません。ですが、2人が一線を越えた肉体関係にあり、なおかつ継続性のある関係だということが証明できれば、法律的にも不倫関係にあったと認められるのです。探偵の調査で集める証拠の要ともいえるポイントです。このことから、相手をとっかえひっかえしている上に、同じ人との2回目はないというような場合ですと、法律的には不倫とはみなされないということになるのです」
とっかえ、ひっかえって……。「一夜限りの情事」と思うと、文学的な香りがしますけれども、それってかなりモテるリッチな男の人にしかできない技だと思うのですが……。
「最近はそうでもないのですよ。今は出会い系アプリもありますので。一度限りの後腐れのないセックスを求める男女が簡単に出会えますから」
一度限りの後腐れのない関係、ですか。そういう事例も調査ファイルにありましたか?
「調査してみたら、いつも相手が違っていたということはあります。例えば、奥さんが自分の親の看病で郷里に帰っている間に、いろんな女性と浮気三昧していたことがありました。しかもね、この夫が本当にゲスなのは、奥さんの父親の保険金を使って女遊びをしていたんです」
え? どういうことですか?
「奥さんのお父さんが倒れて、親御さんの看病でご実家に1週間おきぐらいに帰っていたんですね。一度帰ると数日から1週間ぐらい滞在する感じで。飛行機に乗る距離なので、そうなりますよね」
そうですね。お子さんもいたのですか? 留守はご主人に頼んでいたとか?
「ご主人の妹さんが近くに住んでいたので、妹さんにフォローを頼みつつ、という感じではありました。もともと、お金にだらしのない夫だったこともあって、銀行口座は奥さんがすべて管理していたんです。でも、奥さんがお父さんの看病が必要になって、しばしば帰省する必要に迫られた。不在にする間の生活費をその度にご主人に現金で渡すのも面倒ですから、奥さんは『不在にする間の生活費はここから使って』と、数万円入っている奥さん名義の銀行口座のキャッシュカードをご主人に渡したんです。奥さんは通帳を持っていたので、離れていても入金できますからね」
お金が無くなったら奥さんが入金するシステムですか? 仕送りを全部使ってしまう、大学生じゃないんだから……。
「まさにそんな感じです。ご主人はお金を持つとあるだけ使っちゃうので、お子さんが生まれたころからかな? 全部、奥さんが管理するようになったと聞きました。ところが、ある日、奥さんの口座にまとまったお金が振り込まれたんです」
お父さんの保険金ですね? なんでまた、その口座に?
「奥さんが、保険会社に伝える口座番号を間違えてしまったんです。お父さんの看病や病院の手続きとか、実家と自宅を行ったり来たりと忙しい毎日を過ごしていたので、うっかりしちゃったんですね。ご主人がキャッシュカードを持っているほうの自分名義の口座を保険会社に連絡してしまった。診断一時金や手術給付金として払われたもので、ある程度まとまった金額になりますよね」
保険の内容やどんな病気だったのかにもよると思うのですが、安く見積もっても数十万円ですよね。
「そうですよね。詳しい金額は聞かなかったのですが、奥さんの様子からして2~300万円ぐらいの印象でした。奥さんはしばらくの間、保険会社に伝えた口座を間違えたことに気づかなかったんです。でも、ご主人が『お金を振り込んでおいて』としばらく言わないことに気づいて。記帳をしたら、保険金が振り込まれていてそこで間違いに気づいたわけですが、しかも振り込まれた保険金がすでに、10万円ぐらいずつ、何度も引き出されていた」
こっそりお金を引き下ろして、やることと言えば……。
「不倫や浮気をするには、ある程度の軍資金が必要ですからね。このケースに限らず、一般的にも男は余裕があるときに不倫をする傾向にありますし」
そうなのですね。それにしても、奥さんに「口座にお金がたくさん入金されているけど、どうしたの?」という連絡もなかったのですか?
「連絡もなく、です。ご主人はキャッシュカードしか持っていないので、明細が分からないにしても、残高は分かりますから気づくはずなんですけどね。それでもう、奥さんは堪忍袋の緒が切れちゃった」
切れますよね、それは。切れたのが奥さんの血管じゃなくてよかったです。
「ほんと、堪忍袋のほうでよかったです。奥さんは保険金を黙って使っていることに怒り心頭でしたが同時に過去のことを考えて、女遊びをしていると直感した。それで、もう離婚しようと思って弊社に調査を依頼されたんです」
三下り半を突き付けるだけじゃ、離婚できなかったのですか?
「それまでも、さんざん色々やらかしているご主人だったので、何度も離婚話にはなっていたそうです。そのたびに『心を入れ替える!』『許してくれ!』っていうのを繰り返してきて。その都度、ご主人のほうのご両親が『勘弁してやって』ととりなしてくるという。だから、奥さんとしては『夫はもちろん、夫の両親もぐうの音も出ない証拠が欲しい』ということでした」
第三者の私が言うのもなんですが、使い込まれた保険金も回収したいです! そもそも奥さんのお父さんの治療費に充てるお金じゃないですか!
「もちろんです。しかも、まだ小さいお子さんも2人いるので、離婚後もきちんと養育費が払われるようにする必要もありました」
いかにも養育費を払わなさそうな夫ですものね。養育費がちゃんと支払われるようにする方法って、あるのですか?
「給与の差し押さえなど、養育費の支払いが滞った場合に強制執行ができる形で離婚をする方法があります。そのためには、調停や裁判、審理で決着をつける方法と、協議離婚の場合なら公正証書を作成する必要があります」
そうなのですね! そういうことを知らずに離婚しちゃう人も多いように思います。
「このケースの奥さんもそうでしたよ。最初は『今度こそ離婚できるような、ぐうの根もでない証拠が欲しい』という理由で調査を依頼されていたので。相談のときに養育費や強制執行のお話をして、最終的にしっかり決着させることを目的として調査することを決められました」
後々のことをちゃんと考えて手続きを踏まないと、大変なことになるのですね。
「そうですね。弊社にご相談いただいて、本当に良かったです」
保険金の使い込みがあまりにもゲスすぎて、忘れてしまいそうになりましたが、このご主人は不倫をしていたのでしょうか?
「これがまた、一筋縄ではいかないケースだったんです」
「不倫は『同一人物と継続的に肉体関係にある』ことを証明しなくてはなりません。つまり、相手をとっかえひっかえしているようなケースは不倫にならない。でも、そういうタイプでも継続している相手というのが、たいていいるんですね」
なんどか、繰り返しているうちに気に入った相手がみつかったり、お互いが会うために都合をつけやすいといった理由で関係が継続する相手ができるのでしょうね。
「ただ、この調査では奥さんがご実家と自宅を行き来していたこともあって、奥さん自らが収集していた証拠がほとんどありませんでした。そういう事情もあって、探偵がゼロから調査する必要があったんです。一筋縄ではいかなくて、特定までに少し時間がかかりました」
奥さんが証拠を集めておくと、探偵さん的にも調査がしやすいのでしょうか?
「その通りです。しかも、依頼主にお支払いいただく調査費用も、依頼主の独自の調査資料が豊富だと比較的、抑えられます。例えば、特定の曜日に特定の場所で会っていることが事前にわかれば、探偵もそのタイミングに張り込みをすればよいので。効率的に調査ができるのです」
なるほど。でも、今回のケースではそうした情報がまるでなかったのですね。
「このご主人の場合は、奥さんが不在の期間でお金を口座から引き出したタイミングが怪しいと推測しました。そこで、奥さんには口座の動きを監視してもらって。出金があったら、連絡をもらうようにしました」
奥さんの留守中、お子さんの面倒はご主人がみていたんですよね? 幼稚園と小学生ですものね。日中はご主人は仕事でしょうから、子供の世話はどうしていたんでしょう?
「近所に住む妹さんがフォローしていたんです。子供たちは学校や幼稚園から妹さんの家に帰宅して、仕事が終わったご主人が迎えに行くという感じで。で、どうやら妹さんにも『残業になった』とか言って、子供たちを妹さんの家に泊まらせて、女と会っていました」
でた! 残業! 休日出勤に並ぶ、不倫夫の定番の言い訳ですよね。それにしても、ほんとゲスな夫ですね。子供を妹に世話させて不倫するって。
「探偵業をしているとゲスな夫に対する免疫も高まるのですが、さすがにこのケースには呆れましたね。何回か張り込みして、尾行して、継続している関係にある相手を特定することに成功しました。相手の女性の素性も突き止めましたが、想像していた通り出会い系アプリで知り合った相手でした。アラフォーぐらいの女性で、既婚者だったのでセックス・フレンドみたいな感じだったんでしょうね」
W不倫ですか! やはり、最近は増えていますか? W不倫というパターン。
「増えている印象はありますね。W不倫はお互い既婚者だから、『奥さんと離婚して私と結婚して』みたいな事態になりにくいのもあって、調べてみたら長いこと付き合っていた、というケースも少なくないんですよ」
女性の場合、同時期に複数の男性と性交渉を持つことに抵抗がある人、多いと思うんです。ということは、W不倫の女性側の夫婦関係はセックスレスなのかしら? と勘繰ってしまいます。
「夫婦間のセックスレスが、W不倫につながっていることは否定できないと思います」
なんということでしょう……。話を保険金使い込み夫に戻しますと、探偵さんの調査によって離婚できる証拠がつかめたのですね!
「はい。奥さんに証拠をお渡しして報告して、離婚に向けたアドバイスもしました。養育費は不払いの事例も少なくないので、とくに、このような性格のご主人の場合、養育費不払いの可能性は火を見るよりも明らかです。そのため、給与の差し押さえができる形で決着させるためにも、奥さんに調停離婚をおすすめしました」
調停して離婚すると、養育費が不払いになったら給料差し押さえの強制執行ができるからですね?
「その通りです」
奥さんはW不倫の相手への慰謝料請求はしなかったのですか?
「それをすると、相手のご主人から自分の夫への慰謝料請求も発生する可能性がありますので、おすすめしませんでした」
なるほど。W不倫の場合、お互いの配偶者に慰謝料の請求権が発生するので、痛み分けというか相殺という感じになりますよね。W不倫の当事者のどちらかが、すごい大金持ちというのなら、話は別なのでしょうけれど。
「不倫の結果、離婚ということになっても、多くの夫婦は『同じ財布』で暮らしています。なので、自分の夫から慰謝料を取るってあまり現実的ではないのですよね。夫に隠し財産があるなら話は別ですけれど。ですから、お子さんがいる場合はとくにそうなんですが、離婚した後の生活のことを考えていくことが大切なんです」
そうですね。仮に、妻が仕事をしていて、生活できる収入があったとしても、子供の将来にかかる費用は離婚した後も夫にちゃんと払ってもらいたいですよね。CiaoLab編集部としては、今後、法律をはじめとする離婚にまつわる、さまざまな知識について、情報を発信していきたいと考えています。
「探偵業をしていると様々なケースを見聞きしますが、不倫疑惑から離婚となったときに『やらないほうがいいこと』もたくさんあるのですね。でも案外、知られていないなあ、と感じますので、CiaoLabで情報を調べられるようになるといいですよね」
役立つ情報を発信して参ります! また、いろいろ教えてください!
※本コラムは実際のケースを元にプライバシーに配慮をした形で再構成したものであり、実在する特定の人物のエピソードではありません。
まだデータがありません。
誰かに恋をしたり、愛したり。そこには人の数だけドラマが生まれます。とはいえ、そのドラマは必ずしも素敵なもの、とは限りません。出会って恋に落ち、結婚をした二人でも、別れを迎えることもある。恋が道ならぬモノであることも、少なくありません。
私たちを取り巻く「恋愛事情」や「夫婦の関係」は時代とともに、大きく様変わりしてきました。
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